組織戦略の考え方 / 沼上幹

読書感想文
読書感想文

先日呼んだザ・ゴールがストーリー仕立てだったので、今度は体系的に整理してあるものを探して本書にたどり着きました。最初図書館で借りたのですが、これは自分のバイブルになると思い購入しました。

経営学を学ぶ

先日読んだ経済学の本では、長年のカンと経験があたかも経済学のモデルに従っているような振る舞いをすることを説明していました。すなわち、経済モデルは個人の合理的な行動をざっくりとまとめたものとも言えます。

本書を読んだ時も似たような感想を持ちました。書いてあること自体は目新しいものは無いものの(そもそも2003年出版の本)、なんとなくカンで意識していたものが明確に整理された気がしました。これが真価を発揮するのは、組織戦略について皆で議論する場合だと思います。それなりに経験を積めば組織の勘所は独自で身につくものですが、そのままでは会話や議論を通して発展させることが難しいのではないでしょうか。各々のカンや経験を客観的にまとめるためには、やはり本書のような体系化して整理されたものが必要であると感じました。

組織の基本 官僚制

本書はまず、組織の基本から始まります。言われてみれば、そもそも組織とは何か、何のために作るのかというのはこれまであまり考えていませんでした。本書では組織の基本を「官僚制」、具体的にはプログラムとヒエラルキーとしています。

ヒエラルキーという言葉は様々なニュアンスを含む単語ですが、ここでは階級やカーストのような含みは持たず、シンプルに役割分担という意味合いで考えるのが良いと思います。

第一章の冒頭で『「官僚制」という言葉は忌み嫌われている。』と記されている通り、自身も「官僚制」という響きに柔軟性に欠くネガティブな印象を持っていました。以前読んだ『「作戦術」思考』に出てくる軍の上下関係はやや例外的な組織のありかただと思いながら読んでいましたが、実はそれが基本だったことを今更理解しました。

「官僚制」という基本を押さえてルーチン業務を効率化し、そこで生まれた余裕を戦略的、創造的な作業に費やすという基本を押さえることが重要なのだと理解しました。

組織の腐敗

本書はまず組織の基本を押さえた後で、その組織が疲労して腐敗するまでのプロセスを解説しています。ここで繰り返し登場するのが、ネガティブな意味での「バランス感覚」です。一見、組織が成長するにつれて内部の調整役が必要になるように見えますが、そこが組織の落とし穴になります。

自分自身、組織に長くいるうちに調整がこなれてきたのですが、それは会社の成長を妨げることになることを思い知らされました。内部の調整に腐心して満足するのではなく、あくまで外を意識して意思決定を行う必要があります。

また組織の腐敗というと、やはり行政や政府を思い浮かべてしまいます。組織は自然に腐敗するものだという意識をもって、常にメンテナンスが必要であることを学びました。

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