ケーキの切れない非行少年たち / 宮口幸治

読書感想文
読書感想文

以前から読みたかった本をようやく読みました。

本書を象徴するのが、ケーキが3等分できないイラストです。一般的な大人であれば、「なぜ?」と思うような非行少年の思考回路が次々と説明されます。本書を読み終えたときには、そもそも「一般的」ってどうやって身につけたんだっけ、と悩んでしまいました。

本書で度々登場するのが、「認知機能」という能力です。過去に読んだ本では、動物と人間とを決定的に分ける能力として覚えていましたが、本書では人間同士での認知機能を比較しています。この認知機能に乏しい場合、落語の世界だと笑い話で済むかもしれませんが、現代社会では辛い生活が待っています。

同様に「いじめ」も非行少年の背景に頻繁に出てきます。学習面や身体機能という教育制度上の評価基準において、集団の下位に位置した場合に被害を受けます。そして非行に走るという、悪循環に陥ります。

本書の後半では、これらの解決策を示していくわけですが、あくまで現状の教育制度に沿った形での提案になっています。根本的には教育制度そのものを見直す必要があるように思われたので、この展開は若干もどかしさを感じました。もしかしたら筆者の中で何周も議論を繰り返して、本書の読者相手には現実的な提案を示すところに落ち着いたのかもしれません。

一見自分からは遠い世界の話に思ってしまいましたが、具体的な支援の話では、自分とのつながりを感じることができました。個別の事情に立ち入ることが難しい上に、教育制度という重い壁が立ちはだかる問題ではありますが、まずは科学的な教養をもって冷静に受け止められるようにしておきたいです。

関連本
ヒトと芸術との関係についての本。ヒトの認知機能について、チンパンジーと比較している。
教育制度を直接扱うわけでは無いですが、その息苦しさの背景を教えてくれる本
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