カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か? / 松原始

読書感想文
読書感想文

硬派な動物本が続いたので、たまにはライトな動物本を読みました。

タイトルには4つ動物が出てきますが、本書の内容は鳥類の雑学が多く、とりわけ筆者の専門であるカラスはよく登場します。生存戦略の一つとしてキャッチーなタイトルを付けたことを「おわりに」で語っています。大袈裟なタイトルではありますが、偏見や誤解について考え直す機会を提供してくれるという意味では、気の利いたタイトルだと思いました。

文庫版では筆者の科学への思いが加筆してあるのですが、特に「ざんねんな~」に向けられたメッセージは共感しました。人間のものさしで動物に優劣をつけたところで、動物からすれば余計なお世話かもしれません。

図書館の分類ではティーンズ向けの本なのですが、サラリーマンが本書を読むと、組織(群れ)について書かれた章に注目してしまいます。意外だったのが、ニホンザルがボスザルを中心にした組織を作っているというのが誤解だったということです。餌付けされた環境では優位個体が餌を独占、すなわちボスザルが現れますが、自然環境では特定の個体が餌を独占することはできません。餌付け群を研究対象にし、かつ人間のモデルを動物に当てはめたことから、ボスザル中心の組織が形成されていると見なされたそうです。

これは最近勉強中の自由主義にも当てはまりそうだと思いました。餌(操業許可や給付金)がもらえるシステムでは、力の強い個体(独立行政法人やNPO)が餌を独占し、群れのメンバー(庶民)は残りを分けてもらうことになります。一方自然環境(自由競争社会)では、各々が餌(ビジネスチャンス)を自由に見つけることができるので、腕力で勝てずとも創意工夫で生き残ることができます。

動物のライトな雑学に触れようと思ったら、思いがけず人間社会の側面を垣間見ることになりました。動物から学ぶことは多いですね。

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