現代語版 論語と算盤 / 渋沢栄一 訳=守屋淳

論語と算盤 読書感想文
読書感想文

2021年の大河ドラマに渋沢栄一が取り上げられてから、そのうち読もうと思っていたら今に至りました。気づけば新一万円札の登場まであと一年となりました。

思いのほか自分の考え方に合っていたのか、これまで読んできた本を一気にまとめたような内容でした。そこで、当ブログのこれまでの感想文を織り交ぜながらまとめていこうと思います。

対比関係とバランス

本書のタイトルである「論語」と「算盤」。「論語」は孔子の言行集で、本書では学問や道徳の象徴として用いられています。一方「算盤」、最初は「そろばん」と読めなかったのですが、こちらは対照的に現実や利益を意味します。

この離れているように見える2つの事柄を併せ持つことが本書のテーマです。「実学」や「中庸」という言葉を用いて、バランスを保つことが必要と説いています。

私がこれまで読んだ本だと、「環境」と「国益」がこのテーマに当てはまると思いました。極端な論説に惑わされることなく、バランスのよい考え方ができればと思います。

民間の力

政府と民間の関係についても述べられています。第8章「実業と士道」では、国内産業を不自然に奨励すると無理が出てきてしまうと、また第10章「成敗と運命」では、政府の助けを借りずに事業を成功させる覚悟が必要とあります。そのためには、「人事を尽くして天命を待つ」といった心構えが必要になります。政府から民間へと飛び出し、資本主義の父と呼ばれる渋沢の言葉だけに響くものがあります。

民間の力が重要というのは、これまで読んだ本でも理解していたつもりですが、その原点を知ることでより理解が深まった気がします。

論語の教え

第7章「算盤と権利」の最後に福沢諭吉に言及しています。福沢が国家のために書物を記しているのと同様に、実業界も社会に利益を与えなければならないと。

「学問のすゝめ」にも論語が出てきます。こちらには読み方についての解説もあります。

ゆえに後世の孔子を学ぶ者は、時代の考えを勘定のうちに入れて取捨せざるべからず。二千年前に行なわれたる教えをそのままに、しき写しして明治年間に行なわんとする者は、ともに事物の相場を談ずべからざる人なり。

学問のすゝめ 十三編 / 青空文庫

「論語と算盤」の冒頭でも、論語は注意深く読まないと表面的になってしまうと忠告しています。

偉大な教科書は身近にあるものの、理解するのは一筋縄ではいかない、ということでしょうか。だから解説本が山のようにあるのですね。今後も学問と現実を行ったり来たりしながら、じっくり理解を深めていきたいと思います。

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