亡国の環境原理主義 / 有馬純

読書感想文
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科学と経済、それに国際関係。この問題も複雑ですね。

原理主義に対して

原理主義といえばイスラム教が有名ですが、どの宗教にもあるようです。Wikipediaの記事の分量を見ると、中国語<日本語<英語の順で多くなりました。これだけで判断するのは乱暴ですが、中国は現実路線で、欧米はカルト化しやすく、そして日本は振り回される、といった感じでしょうか。

以前読んだアフガニスタンの本では、現実的な対話路線と原理主義との変遷が繰り返されて、収拾がつか無くなる歴史が解説されていました。やはり対話ができない原理主義とは泥沼になるようです。

最近では宗教だけでなく、アンチ宗教でも原理主義の様相を呈するようになっています。ただし元々宗教に対する教養の土台がないまま盛り上がってしまったので、そのうち飽きるとは思います。

さて本書では環境原理主義をバランスを欠いた考え方として紹介しています。NGOの立場でそのような思想を持つ分には構わないのですが、国の政策に反映されているのが現在の状況です。亡国というタイトルが大げさでないことが、本書を読むとわかります。

ファクトを理解する

本書の冒頭はクイズから始まります。シンクタンクのウェブサイトに掲載されているクイズと、ベストセラー本のFACTFULNESSから引用したクイズです。温暖化や地球上の様々な問題に関する選択式のテストなのですが、自分の正解率は10%にも満たなかったです。ランダムな答えよりも正答率が低いので、もはやチンパンジー以下です。自分の先入観がかなり偏っていることを自覚させられました。

この本で環境原理主義と呼ばれる方々も、地球環境に対して偏った考えをお持ちです。そういう意味では自分も原理主義の素質があるのかもしれません。ファクトをしっかり把握することを心がけたいと思います。

気候変動のファクトを把握すると同時に、地球上の課題は気候変動だけではないことも理解する必要があります。SGDsという日本以外では普及していない考え方がありますが、世界には貧困や食料などの様々な問題があります。またその問題は各国で異なるため、その解決には複雑な利害関係が働くことになります。

ただし複雑な課題というのは地球スケールの話だけではなく、一般家庭や社会にも少なからずあるものだと思います。真っ当に社会を経験すれば、原理主義には至らないと思うのですが、それはそれで世の中はそれほど単純ではないようです。

これからの展望

本書ではやや悲観的な展望で締めくくられています。原理主義も極端ですが、その反対側も極端な考えが存在しますし、その間で建設的な議論ができるかどうかは難しいかもしれません。もちろんノイジーなだけだと思いたいですが、暴力な手段も辞さないことがあるので無視はできません。

温暖化対策の非現実的な目標を読んでいたときに、同じような無理難題を思い出しました。ミサイル防衛のイージス・アショアと、九州新幹線のフリーゲージ方式です。どちらも政治的な背景でやけくそで計画を立てたのだろうと思案します。

しかし温暖化対策は、たとえ行き詰ったとしても住民説明が必要なわけではなく、開き直ればいいだけだと思います。日本だけで孤独にチキンレースをするのではなく、EU、アメリカ、中国の戦略の本質をしっかり理解して、損しないような振る舞いはできないでしょうか?ファクトをしっかり押さえたうえで、バランスの取れた将来設計をしたいものです。

(参考動画)

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