戦争論 / クラウゼヴィッツ

戦争論 読書感想文
読書感想文

以前読んだ大国のハイブリッドストラグル義経愚将論にて引用されていた本です。とても読みにくいという感想が多数あったので、なかなか手が出ませんでしたが、今回挑戦してみました。

もちろん難解な本ではありましたが、何かしら得られるものはあった思うので、記事に残しておきます。

今回一番理解できたのは、戦争はかなり複雑な背景があり、テレビで数分で理解できるようなものではないということです。また当事者の発言をそのまま受け止めるのではなく、そこから一歩踏み込んで真意を探らなければいけません。

ではどうするのかは、今後訓練を重ねるしかないのでしょうが、少なくともまだまだ学ぶことは山積みだということは理解しました。

本書の背景と登場人物

本書は1831年に亡くなったクラウゼヴィッツの遺作(未完)です。現代では戦略・戦術の古典として引用されることも多いですが、本書は冒頭から政治との関連性をを繰り返し述べており、外交における戦争の位置づけを明確に定義したことが大きな功績とされています。

さて本書では多数の人物、地名、戦役が出てくるため、読み進めるのがとても難しいです。こういう時はついWikipediaを見てしまうのですが、神聖ローマ帝国/オーストリア/ハプスブルク帝国が混ざって出てくるため、余計混乱しました。この時代は国境も頻繁に変わりますし、国家というものがまだ曖昧なのですね。

本書によく出てくる人物は、フリードリヒ2世とナポレオンです。本来はこの2名の戦歴を把握しておくことが前提の本だと思うので、もうすこし予習しておけばよかったと思いました。

フリードリヒ2世

18世紀に活躍したプロイセンの国王。在位時にプロイセンの勢力が急成長します。クラウゼヴィッツ自身もプロイセンの軍人です。

本書では全編にわたりオーストリア継承戦争や七年戦争が取り上げられます。

フリードリヒ2世が無くなってからはプロイセンの国力が落ちてくるのですが、その後のプロイセンの努力があってこのような本が生まれるのですから歴史はわかりません。

ナポレオン

フリードリヒ2世と入れ替わるように出てきたフランスの英雄。19世紀にはいるとプロイセンはナポレオン率いるフランスに敗れて、クラウゼヴィッツ自身も捕虜になります。

よくロシア遠征で失敗したと語られるナポレオンですが、本書ではこの戦闘の背景を踏まえたうえで、目的自体は十分達成されていると説明しています(私はそう理解しました)。本書は目的をどう達成するかを主題としているため、その目的の設定についての評価は避けているようでした。しかし少なくともロシアと反対側のスペインとの戦争が同時に起きている状況であり、対ロシアへの目標設定自体がリスクが高いことだったようです。

その他メモ

地形や陣形に関する話など、実戦的な内容はなかなか難しかったのですが、教養として理解できそうな個所をメモしておきます。

奇襲について

義経愚将論でも挙げられていた内容です。奇襲が成功した例は少ないとのことです。そもそもバレる。

特殊な例は印象が残りがちですが、ちゃんと全体の数や個別の条件を把握してから分析する必要がありますね。

批評のやり方について

歴史的事実を引用した批評家に対して、一部問題があると本書では批判しています。まずその歴史的事実をしっかり理解しているか、さらに批判対象を理解しているか。実践(実戦)に適用できるものでなければ、博識を誇示するだけになってしまいます。

独立国家、同盟関係について

本書は戦争の本ですが、基本的には国家間は現状維持の方向で均衡を保っているそうです。フランスが成長すると対フランスで同盟関係ができます。ただしそれは「独立国家」であることが前提で、その比較としてクリミア半島やポーランドを例えにしています。

未来はどうなる

戦略のバイブルとしてビジネスに応用できればと軽く考えていましたが、国家というものについて考えるきっかけになりました。

大国のハイブリッドストラグルにもありましたが、現代の戦争は明確なドンパチだけではなく、日常接するような情報にも潜んでいるそうです。相手がどういう戦略を持っているか、また自国はどうかということを理解した上で、冷静に現代を乗り切りたいです。

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