ニュースの未来 / 石戸論

読書感想文
読書感想文

2年近く読書感想文を続けてきて、ようやく100冊目を達成しました。本書を読むことで、100冊を通して本の読み方が変わったことを実感しました。具体的には、「バランス感覚」が身についてきたことです。

以前は玉石混交のメディアを単純にひとまとめにして、いわゆるマスゴミとして捉えていました。

本書では、筆者が毎日新聞記者時代に作成した記事が事例として登場します。そのうちの一つに、犯罪件数が減っているにもかかわらず、治安悪化が叫ばれている、その理由はメディアの過剰な報道である、という特集記事があります。

ここでメディア全体を一つのマスゴミとして捉えると、この記事はただのマッチポンプです。面白がって凶悪犯罪を煽っておいて、住民の不安が増したところで、逆に犯罪件数が低下していることをアピールして注目を得ようとする行為です。薬物、マルチ、宗教と似たような手口です。

そこで、世間はそんなに単純ではないという視点が必要になります。メディアの中にも様々なヒトがいます。売り上げ重視なヒトもいれば、幼稚な正義感を振りかざすヒトもいます。筆者のように、メディア全体の状況を俯瞰して論評できる人もいます。

そういった視点が身についただけでも、これまで読書感想文を続けてきた甲斐があったというものです。

とはいえメディアを一括りにしないということは、一つ一つの記事の信頼性をいちいち判断しないといけません。本書ではファクトチェックやメディアリテラシーなどが万能ではないことを説明しています。そもそも筆者はニュースの発信側ということもあり、ニュースを受け取る側のストレスについては本書の対象ではありません。やはり、ある程度はメディアを遮断したほうがいいかもしれません。
(参考⇒勝間和代の、テレビのニュースを一切見てはいけない理由を教えます)

さて本書は『ニュースの未来は魅力的で可能性に満ちている』と締めくくっています。この慌ただしい新年の幕開けに、果たしてニュースに何ができるのか、今後に期待します。

参考

本書を読んだきっかけは、日本企業はなぜ「強み」を捨てるのかの書評を石戸が書いていたからでした。

その後、対談記事も出ていました。

「ヒト」を切り捨て衰退した日本、じつは「2023年後半」から流れが一変していた(石戸 諭)
「気鋭」という言葉がこれほどぴたりとハマる学者も珍しい。経営学者、岩尾俊兵(慶應大学准教授)である。
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