2年近く読書感想文を続けてきて、ようやく100冊目を達成しました。本書を読むことで、100冊を通して本の読み方が変わったことを実感しました。具体的には、「バランス感覚」が身についてきたことです。
以前は玉石混交のメディアを単純にひとまとめにして、いわゆるマスゴミとして捉えていました。
本書では、筆者が毎日新聞記者時代に作成した記事が事例として登場します。そのうちの一つに、犯罪件数が減っているにもかかわらず、治安悪化が叫ばれている、その理由はメディアの過剰な報道である、という特集記事があります。
ここでメディア全体を一つのマスゴミとして捉えると、この記事はただのマッチポンプです。面白がって凶悪犯罪を煽っておいて、住民の不安が増したところで、逆に犯罪件数が低下していることをアピールして注目を得ようとする行為です。薬物、マルチ、宗教と似たような手口です。
そこで、世間はそんなに単純ではないという視点が必要になります。メディアの中にも様々なヒトがいます。売り上げ重視なヒトもいれば、幼稚な正義感を振りかざすヒトもいます。筆者のように、メディア全体の状況を俯瞰して論評できる人もいます。
そういった視点が身についただけでも、これまで読書感想文を続けてきた甲斐があったというものです。
とはいえメディアを一括りにしないということは、一つ一つの記事の信頼性をいちいち判断しないといけません。本書ではファクトチェックやメディアリテラシーなどが万能ではないことを説明しています。そもそも筆者はニュースの発信側ということもあり、ニュースを受け取る側のストレスについては本書の対象ではありません。やはり、ある程度はメディアを遮断したほうがいいかもしれません。
(参考⇒勝間和代の、テレビのニュースを一切見てはいけない理由を教えます)
さて本書は『ニュースの未来は魅力的で可能性に満ちている』と締めくくっています。この慌ただしい新年の幕開けに、果たしてニュースに何ができるのか、今後に期待します。