退職金は自分で運用する時代になりました。これを厳しい時代ととるか、チャンスととるかは自分次第なわけで…。
本書のレベル感
基本的な株式会社の仕組みや財務諸表の概要などはある程度知っている前提になります。ただし逆指値や信用取引などについては丁寧に説明してあるので、初心者でも安心して読み進めることができます。
本書のタイトルでもある「投資のルール」を解説する前に、まず投資の目的や心理的な背景から説明があります。「レバレッジは必ず大失敗する」というのが繰り返し説明されるのですが、その心理的な理屈について説明されており、投資に限らず身につまされる思いがしました。
全体を通して筋の通った話だと思いました。多少の知識があるつもりでも、本書のような基本に立ち返ることは大切だと思います。
実践するには
サラリーマンの方にはお馴染みの(?)確定拠出型年金では、投資信託に定額を積み立て資産形成していきます。いわゆるドルコスト平均法ですね。本書ではそのような運用は対象にしていないのか、分類として定額積立は出てくるものの、詳しくは解説されません。というか、あまり解説の必要もないですからね。
本書のターゲットは個別銘柄の現物&信用取引、および先物取引です。一般的にはハイリスク、ハイリターンに分類されます。これを成功させるための必要な準備が説明されるのですが、これを実践するのはなかなか難しそうだなと思いました。
なにも複雑な計算などが出てくるわけではありません。シンプルに、企業をしっかり調べましょう、定期的にチェックしましょうというだけの話です。それが難しいと言っているうちは、この投資に向いていないのだと思いました。
おそらく本書は、読者が「これを読んで投資を頑張ろう」と思うように想定されていると思いますが、私は逆に「これで個別銘柄は諦めよう」と思いました。心理的な影響を排除するために、しっかりルールを準備して臨みましょうというのが本書の基本的な考えなのですが、その場その場で思いつきで柔軟に生きてきた経験があるだけに、すぐにルールを破る未来が想像出来ました。
本書でも、人生はうまくいっても投資がうまくいくとは限らないとありました。逆に言うと、投資がうまくできなくても人生はうまくいくかもしれません。自分に合った投資スタイルを理解するうえでは、大変参考になりました。