工作・謀略の国際政治 / 黒井文太郎

読書感想文
読書感想文

工作・謀略というとなんだかフィクションの世界を想像します。どちらかというと後ろめたいことのようなイメージもあります。本書ではイスラエル、ロシアなどの渦中の国から、欧米や中国に至るまで、現実の情報機関がどのようなものか説明してくれます。

各国における情報機関の体制が解説されているのですが、組織名をgoogleで検索してもヒットしない場合もあるので、本書からしか得られない情報もあるのでしょう(日本語の表記ゆれもあるかもしれませんが)。

報道されている渦中の地域の情勢も、情報機関を軸にして読み解くと違った見解が得られます。イスラエル周辺の大規模な奇襲から小競り合いまで、一般的な報道では個別の事案に見えますが、裏では特殊組織がつながっている例もあります(本書で言うところのコッズ部隊、Wikipediaではゴドス軍)。表では関与していないように振る舞うので、全体構造を理解するのは難しいです。

気になるのは日本の情報機関はどうなのか。世界情勢も相まって着実に強化はされていますが、世界各国とのギブアンドテイクの観点からは不十分なようです。野党とメディアは反発し、官僚はお役所仕事、政治家は票にならないものは後回しです。これから工作・謀略の重要性が世間に認知されるようになれば変わるのでしょうか?

本書は一般向けですから、われわれ一般人が情報とどう向き合うかという示唆も含まれています。プーチン重病説やどっちもどっち論、陰謀論など。本書には関係ないですが、金正恩死亡説なんてのもありましたね。1メディアだけの報道や、論点ずらし(Whataboutism)には注意が必要です。権威主義国家に対する非難に対して、開き直って論点ずらしをするメンタル自体は見習いたいものですが。

参考動画

筆者の経歴、インテリジェンスの全体像について

日本の情報機関について

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