2020年刊行のトップの教養/倉山満では、常識レベルで韓非子とマキャベリが出てきます。これくらいは知っておいた方がよいとのことだったので、そのうち読もうと思っていたら今に至りました。
マキャベリの君主論は、本が薄かったので早めに取り掛かったのですが、巷で言われているような冷徹な内容には感じませんでした。リーダー、しかも君主ならこんなものではないかと。ただ表で堂々と言うのははばかられるので、マキャベリにそれを負わせているのかなと思いました。
韓非子の方は分厚かったので後回しになりましたが、ようやく読む気になりました。大まかな感想はマキャベリと同様に、表立ってはあんまり言えないけど、そういう一面は必要だよね、といった感じです。
訳者の解説では文章の巧みさを特徴として挙げていますが、本書は現代語訳のみなので、その辺りはわかりません(原文があっても理解できませんが)。ただ孔子の悪口はやたら活き活きしているように感じました(難一~難四、五蠹、顕学など)。甘いこと言ってんじゃねーよ、といった具合でしょうか。
マキャベリの方は、「立派な気質を持っているように思わせる」、といった現実的な処世術があるのに対して、韓非子の方は「暴君に何を言っても無駄」、「民衆は法で押さえつけないとつけあがる」といった具合なので、韓非子の方が冷徹です。
※「」内は私の乱暴な解釈です。
法家思想を用いた秦は厳格すぎて滅んだとも言われていますし、この思想だけでうまくいくわけではありません。どちらかというと露骨に振りかざして使うものではなく、心の内に留めておくものかと思います。
現在の社会状況はどうかと考えたときに、以下のツイートが参考になるかと思いました。やはり韓非子の思想は今は内に秘めておいた方がよさそうです。
本書は本来もっと踏み込んで考察されるべき大書なのですが、自分には教養が足りずそこまで及びませんでした。思想面では韓非が学んだとされる荀子、影響を受けた老子、批判の対象である孔子を理解しておく必要がありますし、中国史も夏/殷/周/春秋戦国、必要に応じてそれ以前も押さえておかなければいけません。もちろん興味はあるのですが、小難しい文章を読むのにいささか疲れたので、一旦休憩してからまた挑戦しようと思います。