以前読んだ「地政学で読み解く日本合戦史」は、そもそも地政学の理解が不十分な状態で挑戦したので、消化不良に終わりました。そこで今更ですが地政学をしっかり勉強することにしました。
地政学の世界観
地政学という言葉自体は地理と政治からできていますが、本書では背景として「世界観」の理解が必要としています。
「一般に地政学と呼ばれているものには、二つの全く異なる伝統がある。『英米系地政学』と『大陸系地政学』と呼ばれている伝統だ。両者の相違は、一般には、二つの学派の違いのようなものだと説明される。しかし、両者は、地政学の中の学派的な相違というよりも、実はもっと大きな根源的な世界観の対立を示すものだ。しかもそれは政策面の違いにも行きつく。たとえば海を重視する英米系地政学は、分散的に存在する独立主体のネットワーク型の結びつきを重視する戦略に行きつく。陸を重視する大陸系地政学は、圏域思想をその特徴とし、影響が及ぶ範囲の確保と拡張にこだわる」――「はじめに」より
戦争の地政学 (講談社現代新書) / amazon紹介文
本書はあくまで地政学の本なので、「世界観」自体の説明にはそこまでページを割くわけでは無いのですが、ざっとその流れを追うことができます。ただし不勉強な自分には前提としている知識が大分不足していると感じたので、そこは追ってまた勉強したいと思います。具体的には、国家有機体説、無差別戦争観、モンロー主義、明白な運命、などなど。
地図上に色分けされた勢力図が地政学のイメージでしたが、実際はその根本となる「世界観」を背景にした闘争の様子を明らかにするのが地政学でした。
歴史の共通点
第1部で地政学の概要を説明してから、以降の章で実際の戦争について地政学を用いて明らかにしていきます。緩衝地帯や力の空白との関わり方とその顛末について、様々な事例を挙げていくのですが、ここでもその背景に「世界観」が登場します。すなわち、日本の大陸進出、アメリカの中東への干渉、NATOの旧ソ連への拡大などについて、その背景にある「世界観」を紐解いていきます。
ちなみに中国は既存の地政学的な分類が難しく、いうなれば「両生類」の位置づけとのことです。国境の位置関係から一応はドイツをモデルにして解釈しているのですが、やはりここでも「世界観」、具体的には中華思想への理解が必要なようです。
地政学から見た「運命」
本書の「おわりに」にて、「運命」という言葉が繰り返し使われています。
地政学では地理的な条件という外圧的な要素から、その国の「運命」を見出そうとします。言い換えると、「運命」に翻弄されるとともに、抗おうとしてきた歴史の視座を、地政学が提供してくれます。
それを読み解くには、地図だけでなくその背景にある「世界観」への理解が欠かせません。そこまでたどり着くには、まだまだ勉強が必要だと感じました。