YouTubeで面白そうな本があったので読んでみました。このチャンネルきっかけで本を読んだのは審判はつらいよに次いで2冊目。
ラジオ界の重鎮とのことのですが、その世界に疎い私は存じ上げておりませんでした。ラジオ体操は日課なのですが…。ただ本書に登場するラジオパーソナリティはトークに定評のある方ばかりなので、ラジオに詳しくない自分にも得るものはあるだろうと思い手に取りました。
筆者の肩書は作家・脚本家・放送作家で、本書はラジオの放送作家の立場から書かれていますが、あとがきまで読むとすべてのキャリアがつながっていることがわかります。自分が経験してきたことがトークに活かされるというのが本書の全体的なテーマでもあります。
トークの様々な秘訣が明かされますが、個人的に重要だなと思った基本要素は、自分の話であること、話の熱量、そして「ニン」です。先日受講した編集・ライター養成講座では、これと同じようなことを言う講師もいれば、逆のことを言う講師もいました。筆者は『「ああ、こういう考え方もあるよな」と参考になれば』と述べており、必ずしも正解を決めつけているわけではありません。
「ニン」については、就職活動のときの自己分析を思い出しました。ただその時は面接官に自分を良く見せることが目的だったのですが、トークの場合はむしろダメな部分も活きてきます。とはいえ、40になっても自分を良く見せたいという気持ちはなかなか捨てきれません。それも含めて「ニン」なのかもしれませんが。
筆者が伊集院光の話の腰を折って場所などの詳細を尋ねる場面は、自分の仕事っぷりを見ているようでした(おこがましい話ですが)。自分は見えているが相手は見えていないというのは、指摘してくれる人がいないとなかなか気付けないものです。年を取ると客観的な立場からチェックを頂く機会も少なくなるので、今後もらえるアドバイスは謙虚に受け止めたいと思います。
本書はトークのコツがわかりやすく説明してあるので、読み終えると根拠の無い自身が湧いてきました。もちろん訓練は必要だと思いますが、気負いすぎるのもよくない気がします。まずは自分に合った「語り口」を理解して、そこから自分なりの「切り口」を見つけ出していきたいと思います。
広告■本書目次
PRTIMES/https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000574.000012754.html
- はじめに
- 第1章 「面白いトーク」という呪縛
あの人の話はなぜ面白い?/プロでも意外に喋れない/「フリートーク」という名の呪縛/「エピソードトーク」という名の呪縛/「オチ」の呪縛/「面白い=笑える」の呪縛/人は誰かに話を聞いてもらいたい/人は誰かの話を聞きたい- 第2章 トークの構造
ラジオのアイドル番組/アイドル番組とトークの関係/ベストテン番組を見ていて気づいた/たとえば、クリスマス/台本は無視してもいい〜熱のあることを話す/メモはいいけど、文章にしない/これはなんの話なのか?〜戻ってくる場所を決めておく/嚙んだっていい、考えながらでもいい/自分の話をする/誰でも言えることになっていないか?/自分は見ているが相手は見ていない/トークの流れ/【つかみ】/【できれば日常ネタで】/【理想は、巻き込まれ型】/【手を引っぱられて森の中を歩く】/【臨場感】/【そして夢からさめたように】- 第3章 「つまらない」にはワケがある
「盗む」のは難しい/反面教師①話が長い/反面教師②話があちこちに飛ぶ/反面教師③一方的に喋る/反面教師④ギャグやダジャレを連発する/反面教師⑤難しい言葉や専門用語を多用する/反面教師⑥小声でボソボソ喋る/反面教師⑦ニュースや新聞で見たことを喋る/反面教師⑧友達や家族の話をする/反面教師⑨自慢話をする/反面教師⑩昔話をする/反面教師⑪「笑った話がある」で始める/反面教師⑫要約を先に言う/アラは探してみたけれど- 第4章 トークの「切り口」
この街にはなにもないですよ/見ているのに見えていない/聞いてみなけりゃわからない「切り口」/思惑とは違う「切り口」/二十年眠っていた「切り口」/落語の「まくら」/出来事より心の動き/切り口①旅行報告〜旅の行程を話す/切り口②旅行こぼれ話〜旅の行程の余白部分/切り口③旅行アクシデント〜旅にはトラブルがつきもの/切り口④旅行前後〜旅の前と後/切り口⑤心の動き〜旅の過程でなにを思い、感じたか/「ゆるパイ」とは?- 特別企画 誌上トークレッスン
- 第5章トークの「語り口」
アナウンサーの向き不向き/訛ってもいい/夏の我慢大会/ラジオから学ぶ①あなたに喋る/ラジオから学ぶ②言葉のチョイス/ラジオから学ぶ③臨場感と熱量/ラジオから学ぶ④電話しているつもりで/ラジオから学ぶ⑤メリハリモリ/トークの構成〜膨らませる/【その理由】/【その前後】/【その思い出】/トークの構成〜順番- 第6章 「ニン」に合うトークとは?
「ニン」とは?/いっこく堂で気づいたこと/デートネタの賞味期限/ニンを構成するもの――内面/【内面】/ニンを構成するもの――見た目・声・年齢・属性・キャリア/【見た目】/【声】/【年齢】/【属性】/【キャリア】/無理をしたってしょうがない/パブリックイメージとセルフイメージ/オジサンのクリスマス- 第7章 トークの居場所
大きなスピーチバルーン/小さな子供が…/個性と共感と共有と/「だが、情熱はある」/マイナスはプラスになる/人生があってトークがある- おわりに