師匠、御乱心 / 三遊亭円丈

読書感想文
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新作落語のトークでよく名前が挙がるこの方の本を読んでみることにしました。2021年にお亡くなりになった三遊亭円丈です。

落語を見始めて1年ですが、もっと早く興味を持っておけばと思うことが多々あります。そうすれば、寄席で噺を聞く機会もあったのですが。

作品の時代

本作は主に昭和53~54年の騒動の一幕を、筆者の視点で描いた作品です。最近読んだ浅草キッドは昭和47~58年を描いた作品なので、ちょうどその中間の時代ですね。

ちなみに落語立川流は昭和58年に誕生しています。現在の各団体はこの頃に成立したのですね。

作品の主な登場人物

本作の登場人物についての、私(落語ファン歴1年)の現時点の知識をまとめました。なお本作では圓はすべて円で表記してあったので、それに従います。

三遊亭円生(6代目)

本タイトルの「師匠」。現在でもTBSの落語研究会で当時の落語が再放送されるので、相当な名人芸であったことがわかります。その放送で「淀五郎」を見たのですが、それはもう清流のような落語だと思いました。昭和の落語家と言えば荒っぽくまくし立てるイメージでしたので。

大河ドラマ「いだてん」でも登場するのですが、当時私は落語に全然興味が無く、むしろ落語パートは邪魔だとも思っていました。今思えば恥ずかしい…。

三遊亭円楽(5代目)

筆者の兄弟子。笑点の司会者でしたので、落語に興味が無い時代でもこの方は知っていました。声は円生に比べると大分こってりしてます。

三遊亭円丈

本作の筆者。昨年放送された「イレブン寄席」中のトークで名前が挙がっていたので興味がわいたのですが、すでに亡くなられていました。

この方の落語が聞けないかとApple Musicで検索したのですが、落語は見つからず、なぜか「恋のホワン・ホワン」という曲がヒットしました。私にとってはいまだに謎の落語家です。

感想

巻末の解説で夢枕獏が『これは巷にあふれる、いわゆる暴露本などではない』と書いていましたが、まさにその通りだと思いました。筆者は本騒動の中心に振り回される立場であると同時に、師匠と弟子という特別な関係もあります。芸がモノを言わせる世界だからでしょうか、登場人物のクセも強いので、事態の収取は一筋縄ではいきません。

本騒動の元は円生・小さんの方針の対立ですが、どちらの言い分も一理ある上に、メンツも相まって抑えが効かなくなっています。これらを単純に非難することができない筆者の複雑な感情に、こちらまで気を揉んでしまいます。

また文庫版の対談で筆者は「三遊亭」へのこだわりを語っていました。三遊亭ならばこうあってほしいという強い思いが背景にあったので、一連の騒動にここまで思いの丈が及んだのだと思います。亭号や屋号の重みというのは一般人には難しいですが、それも落語を楽しむ一つのポイントかなと思いました。

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