コンピューティング史

読書感想文
読書感想文

今では必需品のスマホやパソコンですが、中身が高度すぎてよく仕組みがわからない時があります。そんな時ふとコンピューターが、得体の知れない、恐怖すら覚える存在に見えることもあります。そんな時は、着実に1歩ずつ進んできた歴史を紐解いていくのもいいかもしれません。

情報処理の歴史

本書の原題は”Computer: A History of the Information Machine”であり、情報機器の歴史を対象にしています。今でこそ情報機器といえば電子的なデジタル機器をイメージしますが、本書では手動式の巨大な機械からスタートします。

内容は結構難しく、聞き慣れない言葉を挙げると、階差機関、解析機関、真空管、水銀遅延線…、などなどキリがないです。試しにネットで調べると、かなり重厚な写真に圧倒されました。タイガー計算機は博物館にあるそうですね。今度見てみたいです。

タイプライターが出てくると、少し身近な話になってきました。映画やドラマで見たことがあるだけで、実際に見たことはないのですが…。ここから女性のオフィスワーカーが出てきます。タイプライターを本書ではコンピューター産業の基本的特徴を有するものと捉えているのが興味深かったです。

コンピューターが普及するまで

技術的な話だけでなく、マーケティングの話が良く出てきます。例えばIBM 650を格安で教育機関に設置して、IBMを慣れ親しんだ技術者を増やす話など。ADSLを普及させたソフトバンクも似たような例ですね。本書では情報の歴史は技術だけの歴史ではないことが繰り返し強調されます。

一方で本書でホビイストと書かれた存在は、一般的にマーケティングが難しい存在ではないでしょうか。そのままでは市場が広がらないところに、エバンジェリストが出現します。教科書で言うところのイノベーターやアーリーアダプター、オピニオンリーダーでしょうか。この世界ではプレーヤー側もホビイストやエバンジェリストのような側面を有しており、登場人物に複数の役割があるのが興味深かったです。

有名なビジネス本である「イノベーションのジレンマ」や「ビジョナリーカンパニー」でもコンピューター関連の話は出てきますが、本書を読むことでよりその前後関係が紐解かれました。ばらばらに見えていたケーススタディがつながった時は、頭の中が整理されて収納スペースが増えたような感覚になります。

情報に囲まれたときに

最近5GのWiMAXを導入したので、長年お世話になった光回線が要らなくなりました。社会全体の通信インフラも大きく変わる予感がしています。するとますます身の回りに情報があふれていくことでしょう。そんな膨大な情報に疲れた時に、そもそも情報ってなんだっけ、と考えてみるのもいいなと思いました。

コンピューティング史: 人間は情報をいかに取り扱ってきたか
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