福沢諭吉「官」との闘い / 小川原正道

読書感想文

以前思うところあって、一度学問のすゝめについて投稿しました。とはいえこの方の言説はもっと奥が深いので、こういうのは繰り返しいろんな角度から勉強することにします。

明治14年の政変

本書における重要なポイントの一つです。主な登場人物は大隈重信や伊藤博文などですが、本書では特に井上毅に注目されています。

別途勉強が必要だなと思ったのは、当時のイギリスとドイツの国家体制についてです。一度フランスの本は読みましたが、まだまだ勉強することは多そうです。自国の政治を深く理解しようと思うと、他国の政治も理解する必要が出てキリがないですが、自分が教養不足なだけなのでコツコツ勉強します。

さて福沢の主張である国会開設に対して、既存の秩序を脅かしかねないと警戒したのが「官」側でした。一見福沢が急進的に見えます、本書では地方自治からの漸進的な構想を持っていたことが説明してあり、その思想は現実的で地に足のついたものであることがわかります。

最近中学生向けの経営学の本を読みましたが、この福沢の精神に通じるものを感じました。そういえばその著者も慶應義塾大学出身でしたね。伝統は今も生きているようです。

帝室論

こちらも重要なポイントだと思いました。明治15年の論説です。今読むと特に違和感のない内容でしたが、皇室の位置づけを模索している当時の時代を思うと先見的です。

こちらも日本に合わせた現実的な理論であったと思われます。ただし政治の世界は今も昔も正論を通すのが難しく、結局皇室は徐々に政治利用されていきます。それが昭和の天皇機関説で如実に表れてしまいました。

令和や平成などの元号に象徴されるように、皇室は日本の価値観に欠かせないものと言えるでしょう。まずは福沢の考えをしっかりとに押さえておきたいと思います。

私学について

さて現在では、日本に国会は存在しますし、皇室も政治の枠外にあります。ここまでは福沢の思いが実現したと言えます。ただし私学の位置づけに関しては、まだ福沢の時代とあまり変わらないのではないでしょうか。

私自身は国公立の学校しか行っておらず、そのきっかけも学費が安い以外にあまりありませんでした。しかしそうやって知らないうちに、官学>私学の価値観が植え付けられているのかもしれません。よく考えたらどちらも実質ほとんど同じカリキュラムなのに、学費が大きく違うのは違和感を感じます。

これは広い意味でとらえると、民間に自由な権限を与えるべきということになります。ただしそこには常に、民間には任せられないという意見がついて回ります。そこで民間が権限を得るために、教育によって民間の地位を向上させることが必要になります。福沢の思想は目的から手段までが有機的に連動していることがわかります。

このような一貫した考えを持っておきながら(持っているためか)、当時は「官」から目をつけられていました。しかし現在その理想は実現の過程にあります。さらに成就させるためには、より現実を理解した着実なアプローチが必要になることでしょう。ヒントは本書にもあった「情報網」や「人脈」にあるのかもしれません。

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