『日本“式”経営の逆襲』が増補版になってパワーアップしました。経営教育に心血を注ぐ筆者らしく、著作権を一部放棄とのことなので、有難く引用させていただきます。
経営論の背景にあるもの
本書では日本式経営に対して「根拠なき悲観論」が蔓延っていると繰り返し訴えています。そしてアメリカ式と日本式、それぞれに強みがあることを冷静に分析し、「日本だからこそできること」を提示してくれます。
すなわち、日本式を卑下することもなく、かといって過剰に持ち上げるわけでもありません。フラットに近い視点で、根拠を明確にした理論が展開されます。
このようなスタンスはかなり新鮮だったのですが、その理由も本書では説明されています。
第1章から引用。日本式・アメリカ式をまとめ上げた視点が新しく感じた背景。
何事にもインセンティブが必要であることは、以前読んだ『論破力より伝達力』にも書いてありました。経営論やビジネス本が生まれるには、必ずそこに何らかの背景があります。
そしてそれは、経営に限らず書籍やメディア全般に言えることだと思います。ここでも『FACTFULNESS』を身につけ実践する必要性を感じました。
経済と「ヒトの価値」
本書では高度経済成長期と現代との経営の違いに「ヒトの価値」を挙げています。その変遷には、インフレ・デフレなどのマクロ経済が影響します。
「はじめに」から。ヒトの価値と経済について。
googleで「インフレ ヒトの価値」と検索してもこのような主張は出てこないので、おそらく筆者独自の視点だと思います。もちろんインフレ・デフレは会社の業績に直接影響するものですが、経済技術に結びつくというのは新しい発見でした。
昭和の会社の行事や文化がすべて優れているということでは無いでしょうが、ヒトを重視する経営からは学ぶものがあると思いました。
ビジネスの現場
本書には身につまされる話も出てきます。
第3章から引用。これ自体はフィクションですが、似たような話はいくらでもありますね。
トップと現場が優秀にもかかわらず、その強みが無駄になるケースです。個人的には現代の組織、および社会や情報が複雑化している事も原因の一つかなと思いました。本書で言うところの「フィクサー」や、『組織・チーム・ビジネスを勝ちに導く「作戦術」思考』のような戦略と戦術をつなぐものが求められる時代になったようです。
本書の参考文献は専門的な論文がほとんどですが、中には一般書も紹介してありました。本書の理解をさらに深めるために、それらの本にも挑戦していきたいと思います。
広告