ミクロ経済学の力 / 神取道宏

読書感想文
読書感想文

一般向けの経済学の本を読んでみて興味がわいたので、少し専門寄りの本を読んでみましたが、見事に打ちのめされました。それでも得るものはあったと思います。

ミクロ経済学に挑戦

たまに経済学の本に挑戦していましたが、壮大なテーマに置いてけぼりになる感覚が続いたので、もう少し経済学の基本を勉強しようと思いました。本書は専門的な内容までカバーしているので正直かなり難しいのですが、補助金やTPPなどの実際の話題も豊富なため、挑戦してみることにしました。

途中で用語を忘れた時に検索できる便利な電子書籍版を購入したのですが、数式や図表を読むのがkindle端末では難しかったので、iPadで読んでます。それでもなかなか苦戦したので、もう少し初心者向けの解説を探することにしました。結局以下のyoutube動画で一通り流れを押さえてから本書を読み進めることで、何とか最後までたどり着けました(それでも一般均衡分析や補論などは飛ばし読みしたままですが…)。

はじめよう経済学 | Econ.@YouTube
動画授業「はじめよう経済学」で経済学を学んでいきましょう! YouTube上で公開している全16回の動画授業で、ミクロ経済学とマクロ経済学の基本を学ぶことができます。まずは「第1講 市場」からご覧ください。

経済学からみた政策

本書は数式や図解を盛り込んだ理論に、現実の実例を多数盛り込んだ構成となっており、「経済学は机上の空論ではない」と繰り返し説明しています。経済学の本を多く読んだわけではないので他との違いはわからないのですが、身近な話題も多いのでとりあえず最後まで読んでみようという気にさせる内容でした。

苦しんだのは微分やベクトル等の数学的な理論です。20年前に勉強したはずなのですが…。まだ微分は視覚的にイメージできるのですが、ベクトルが出てくると身構えてしまいます。そんな読者も想定しているのか、直感的な解説を混ぜたりパラメーターの説明を繰り返し入れてくれる親切な設計になっていました。

また各所で規制緩和のメリットを解説しており、『税金下げろ~』のような自由主義にも通じるものがありました。ただあくまで経済学は数学モデルを提供する立場で、現実の出来事や思想・イデオロギーとは分けて考える必要があると補足しています。「制度を憎んで、人を憎まず」というのが経済学のスタンスだそうです。

余談ですが、以前読んだ『自由と成長の経済学』は炭素税に賛同する内容だったので、規制寄りの内容にも思えたのですが、本書によって少々見方が変わりました。二酸化炭素の排出によって誰かに損失が生じるという仮説を立てる場合は、税をかけるというのは経済学の基本的な考え方なのだと理解しました。その仮説を検証しようとすると迷宮入りするので、あくまで基本的な経済学の話にとどめたのだと思います。

経済学の出番

本書の率直な感想は、経済学を用いて制度を設計すれば、もっと自由で豊かな社会になるのではないかということです。ただし以下の記事やtweetのように、そんなに単純な世界ではないようです。

政治に経済論はいらない|減税新聞(N)
こんにちわこんばんわ。 全ての増税に反対し、全ての減税に賛成する自由人、七篠ひとり(@w4rZ1NTzltBKRwQ)です。 今日は少し長いのですが 「政策議論と政治運動は違う」 「やるべきことは政治運動である」 という大切な話ですので是非...

経済学の前には政治や法律の壁があるため、その応用は一筋縄ではいきません。そもそも理論だけで動かないのは一般社会も一緒ですね。本書でも筆者がかなりお膳立てをしたうえで現実問題に応用しているので、にわか知識で使いこなすのはまだ難しそうです。経済学をちょっとかじっただけでは通用しない世界ですね。今後も本書を繰り返し読んで、経済の感覚を鍛えるとともに、並行して現実社会も理解しておきたいと思います。

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