ウルトラマンをあまり観たことが無いので、本書を一読した時点ではそこまで考えがまとまりませんでした。数か月経ち、シン・ウルトラマンが公開されたので早速観にいきましたが、そこでウルトラマンの圧倒的な存在に心を奪われました(IMAXの迫力もありますが)。まだまだ本質の理解には及んでいないとは思いますが、何か書きたい衝動に駆られました。
娯楽番組の背景の考察
ウルトラマン自体は娯楽番組なので、政治的メッセージが明確に述べられているわけではありません。ただシン・ウルトラマンでネットワーク社会が当たり前になっているように、その時代の社会や空気は反映されています。そこから、日本にとってウルトラマンとは何か、なぜウルトラマンは戦ってくれるのか、という疑問を本書では紐解いていきます。
神話に例えられるウルトラマン
本書のサブタイトルは「日本人の守るべき神話」です。日本を怪獣から守ったところで、ウルトラマンには何の利益もありません。そこで、「神話」に例えられています。理屈では説明できない存在です。一方現実世界は、複雑な利害関係で構成されています。「あちらを立てればこちらが立たず」や「敵の敵は味方」などの中でうまくバランスを取りながら生き抜くサバイバルです。この現実世界と、神話の世界とを両方理解することが必要だと説明されています。
現実世界から見たら、作品としてのウルトラマンは神話だと理解できます。その作品の中では、ウルトラマンは自分は神ではないと諭しています。地球人たち自らの力で生きるんだと。このメッセージが時代によって変化していることを本書で解説しています。すなわち「自らの力」の変遷をたどることができます。
神を求める人々
地球上にはいろんな神がいます。いろんな人が、神に救いを求めています。宗教的な意味でも、娯楽作品としても。おそらくそうすることが、人間の営みには必要なのでしょう。自力で立ち上がる、神にすがる、また自力で立ち上がる、そんなことの繰り返しなのかもしれません。
また、本書では神話を共有することの大切さも述べられています。現実世界の安っぽい言葉だと、ビジョンを共有化する、とも言えるでしょうか。組織論、さらには国家感につながるような物事の見方、とらえ方を得ることができたような気がします。
(参考動画。やや難。)
ウッドロー・ウィルソン 全世界を不幸にした大悪魔 (PHP新書)
ウェストファリア体制 天才グロティウスに学ぶ「人殺し」と平和の法 (PHP新書)