知られざる海上保安庁 安全保障最前線 / 奥島高弘

読書感想文
読書感想文

横浜赤レンガ倉庫の奥に海上保安庁資料館があり、ちょっと時間があったので立ち寄った事があります。そこには2001年に海上保安庁が対峙した北朝鮮の工作船が展示してありました。銃撃戦が日本近海で起きているという現実を見せつけられたことをよく覚えています。

本書は海上保安庁が担う日本の安全保障について、元海上保安庁長官の筆者が丁寧に解説してくれます。

前半部分で、海上保安庁と自衛隊の違いが説明されます。それぞれ法執行機関と軍事機関という位置づけになるのですが、特に強調されていたのが、法執行機関の緩衝機能としての役割です。

これは「海上保安庁を軍事機関にするべきだ」という意見に対する回答でもあります。この「意見」の方はたまに目にするのですが、「回答」を聞いたのは初めてのような気がします。

本書の表紙に海上保安庁の船が中国船と並走して監視している写真があるのですが、警察組織として対峙しているので、これ以上エスカレートすることはありません。これが軍事組織が出てくると、事態が深刻になる可能性があります。

この、立場によって意味合いが違ってくるという考え方を自分で説明するのは難しいのですが、本書の解説は非常にわかりやすいです。海上保安庁の歴史、世界の事例、そして自衛隊との様々な違いを読み進めることによって、海上保安庁が法執行機関である必要性がよく理解できます。

後半は海上保安庁の優れた実績や能力をアピールしています。絶対に負けられない国防最前線の矜持が感じ取れます。

海上保安庁の役割だけでなく、国防の考え方を示してくれる本でした。この本で得た知識を元に、正しい理解を広めていきたいと思います。

参考動画
筆者のプロフィール紹介(海上保安大学校~海上保安庁長官)
海上保安庁の安全保障
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