大国が動いている、いや蠢いている…。
戦争とストラグル
本書はフォーラムを書籍化したもので、そのダイジェストはYouTubeにあります。ただ実際に文章で読むと、一度聞いただけでは全く理解できていなかったことに気づかされました。
今回新しい概念として出された「ハイブリッドストラグル」。既存の戦争の概念では、もはや説明できない状態にあるということが述べられています。単に戦闘行為に限らず、また対立構造も複雑になっています。今まさに押さえておかなければいけない世界情勢のエッセンスが詰まった一冊です。
各章について
第二部では各登壇者(著者)からの個別の解説があります。“これくらいは初歩的な内容だよ、でもこの程度は押さえておかないといけないよ、そんなに単純な世の中じゃないんだよ”というメッセージを感じました。
私にはまだ理解が追い付かない部分もあったので、今後継続して学んでおきたい内容をまとめることにしました。有言実行になりますように。
第一章 アメリカの最優先政策と裏付けとなる価値観 (渡瀬裕哉)
情報の「解像度」が重要だと教えられました。アメリカに関する情報は多数あるのですが、少なくともアメリカを一括りにしている解説は注意が必要がと思いました。共和党や民主党、また大統領や議会など、どの力が働いているのかを押さえておくことが必要です。
アメリカは州ごとに把握しなければいけないようです。大統領選挙の印象で、州を赤/青に色分けした地図を思い浮かべてしまうのですが、そんなに単純ではないようです。今後は動画を流し見せずに、地図を見ながら少しずつ覚えていこうと思います。
第二章 中国の最優先政策と裏付けとなる価値観 (中川コージ)
外枠の国家体制だけを見るのではなく、しっかり中身を見ることが重要でした。権威主義国のイメージではわかりませんでしたが、国内ではしっかり競争原理が働いていて、経済や科学技術が凄まじく発展しています。
また民主主義の弱点を利用した戦略は、共感できる部分もありました。だからこそ、民主主義にできることはなにか、しっかり考えておく必要があると思いました。
第三章 ロシアの最優先政策と裏付けとなる価値観 (小泉 悠)
不勉強で混同しているところがあったので、初歩的なメモから…、
ヤルタ会談(1945年)…世界大戦後の利害調整(冷戦の始まり)
マルタ会談(1989年)…東西冷戦終結
ロシアはこのヤルタ体制の感覚、すなわち大国の地位にいる感覚だということです。経済が伸び悩んでいるのに制裁を受けている状況の中、アイデンティティの再構築で体制を保っているようです。
アフガニスタンの歴史のように、いろんな国の歴史に登場してきますので、今後の読書でも見かけることでしょう。その時に少し解像度を上げて、どういう価値観で登場しているのかを都度押さえておこうと思います。
第四章 地政学上の米中露の関係性 (奥山真司)
地政学の話ということで、世界地図が頭の中に入っていないと話が理解できません。本書に出てきた北極海、中国、インド太平洋の地図はすぐにイメージできるようにしておきたいものです。
改めて考えてみたら、自分は日本の領土もよくわかっていなかったので、反省しています。まずは尖閣諸島や台湾の位置から、東シナ海、南シナ海などをちゃんと覚えておこうと思います。
(初歩的すぎる…。)
第五章 現代戦の常識 (部谷直亮)
まず基礎として、クラウゼヴィッツの戦争論が出てきました。この本いつかは読みたいと思っていましたが、その分量に躊躇していました…。今年中に挑戦します!
この基礎的な知識と同様に、コスト感覚も興味深い話でした。行政はもちろん民間企業にも通じる話です。対応しなければいけないことが山ほど増えているので、これらの本質をしっかり理解した上で、したたかな対応ができるようになりたいものです。
解像度を上げる
画像ファイルと違って、世の中の情報には解像度が表示されていません。自分で解像度を判断するか、または解像度を上げる作業を行わなければいけません。
本書をスタートとして、さらに教養を積み重ねることで、解像度の高い情報にたどり着けるようになりたいと思います。
(参考動画)