成長に不安はつきもの。
本の目的
本書は人新世の「資本論」という元ネタ本に対する回答として書かれています。その元ネタのほうは読んだことが無いのですが、本書の序章を読んでだいたい察しがつきました。脱成長を掲げる本はちらほら書店で見かけるので、一部の人には需要がある市場なのだと思います。
その脱成長の主張に対し、本書では一瞥に付すわけではなく、ちゃんと向き合った形で解説してくれました。これまで脱成長については、共産党のようにちょっと世界の違う話だと思っていましたが、そんなことは無くわりと普遍的な考えだということが理解出来ました。
脱成長の思考回路を紐解き、改めて自由と成長の大切さを理解するために、人新世の「資本論」が一役買ってくれたのだと思います。
反成長の歴史
経済成長や資本主義という考え方は新しく、人類の歴史の大半は反成長で占めているそうです。成長勢力は貴族などの既得権益を脅かす存在になるので、反成長を促して支配することになります。宗教でも貪欲な成長を教えることはなく、むしろつつましい生活に満足させ、富を分け合うのが良いとされます。
歴史を学ぶとほとんどが反成長の時代になります。それを踏まえると、脱成長の考えが一定数いることは自然なことかもしれません。
資本主義はゼロサムゲーム?
一方が得をして、一方が損をする。資本主義はいわゆるwin-loseの構造になっている、というのが脱成長側の言い分です。社会主義のlose-loseの構造に比べるとよっぽどマシだと思うのですが。
とはいえ成長する社会の中では、自分も成長していかなければならず、ついていけるか不安になるのもわかる気がします。そういう心の隙間に寄り添うのが社会主義の魅力かも知れません。だからこそ、社会主義の成れの果てをしっかり勉強しておかなければいけないと強く感じました。
社会主義をネガティブにとらえるのと同時に、自由と成長をもっとポジティブにとらえなければいけません。成長があったからこそ、今の便利な世の中があるわけですから、もっとこの成長を称えていきましょう。もちろん会社の役職と同様に、自由度が高くなるにつれて責任がついてくるので、自由を得るにはそれなりの実力が求められます。自分自身も成長しながら、自由を手に入れていきたいと思います。