世界で一番詳しいウナギの話 / 塚本勝巳

読書感想文
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パンダペンギンに続いてウナギの本を。動物本の感想文が増えてきたので、新しく動物タグを作成しました。

「世界で一番詳しい」のタイトルの通り、かなり読み応えのある内容でしたので、各章ごとにメモを残しておきます。

感想

「はじめに」で、なぜウナギの研究をするのかが語られます。社会貢献よりも趣味に近いと語られていますが、趣味にしては船舶などの大型設備に加えて、遺伝子解析などの最先端技術を駆使した壮大なプロジェクトだと思いました。この規模のプロジェクトをさらっとこなせるのが一流の研究者なのかもしれません。

第1章 なぜ、動物は旅に出るのか ー ヒトも魚も「脱出する」

ウナギに入る前に、まず回遊魚の勉強から。例として、アユにスポットを当てます。そもそもアユが回遊魚だということも知りませんでした…。

後半は飛躍して、民族大移動の話にも及びます。早速ウナギ研究のカバー領域の広さを目の当たりにしました。

第2章 ウナギの進化論 ー 深海魚から回遊魚へ、二億二〇〇〇万年の歴史

世界のウナギの歴史について。歴史と言っても億年のスケールです。テーティス海(テチス海)という、今は存在しない海洋をウナギが通っていたという、太古のロマンを感じる話です。

第3章 ネガティブ・データの大切さ ー グリッドサーベイと耳石の研究

時代は20世紀に移り、ウナギの研究が始まります。まずは章題のような、ウナギ研究の基礎について解説しています。

ここから始まる新たな発見にワクワクしますし、時間的・地理的スケールの壮大さに驚くばかりです。

第4章 海山に「怪しい雲」を追う ー 三つの仮説と検証の十四年

研究成果がNatureに掲載されたり、空白の14年があったりと、曲折浮沈の期間です。仮説と検証がコンパクトにまとめられていますが、実際は相当な年月を要しています。それだけ謎に満ちた生き物だということですね。

ここでのキラーワードは「合同結婚式」です。繁殖を至上命題とした場合の最適解として、たどり着いた産卵方法です。確かに理にかなってますね。

第5章 ハングリードッグ作戦 ー なぜ、親ウナギは塩分フロントを求めるか

本章には、以前読んだペンギンが教えてくれた物理のはなしにも登場したデータロガーが登場します。「ペンギン~」の方は読書感想文の課題図書でもあり、科学の夢と希望が込められた本でした。本書はそれだけにとどまらず、研究インフラなどの現実的な話が登場します。

予算の話はある程度は想定できましたが、研究船の申請というこの研究分野特有の手続きは馴染みのないものでした。研究は趣味といいつつ、このような現実的な手続きも処理できなければいけません。

第6章 ウナギ艦隊、出撃ス! ー 世界初の天然卵採取、親ウナギ捕獲

ようやく本書のクライマックスである、ウナギの天然卵採取が達成されます。この章までにウナギ研究の初歩的な話、すなわち海流や水質、海底の地形などの馴染みのない解説が続いてきましたが、ここで諦めずにくらいついておくと、当時船上で議論された計画変更の様子がよりダイナミックに伝わってきます。

第7章 ウナギ資源保全のために何をすべきか ー 回遊の多様性と完全養殖実用化のポイント

「はじめに」では社会の役に立つかもしれないし、立たないかもしれないと言いつつ、最終章でしっかりと社会と向き合っています。ただ一般的な研究がこうあるべきというよりは、筆者の見識の広さがなせるものかもしれませんが。

ここまで海洋学という、総合科学というべき幅広い分野の解説が続いていましたが、最後は文化や政治などにも話が及びました。今度ウナギを見かけたら思索にふけってしまうかもしれません。

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