国際法シリーズを読んだ後は、そのどちらにも登場した本書を読んでみることにしました。
本書が世に出た明治20年(1887年)を調べたところ、ちょうど憲法草案の検討が始まった時期でした。欧米列強と対等な立場を獲得するために、日本を文明国にしようと先人たちが必死で努力していた時代です。
その文明国になるための条件が、国際法を使いこなすことです。本書は、国際法を遵守する紳士君と国際法を軽んじる豪傑君が自説を唱えた後に、南海先生が両名を諭す構成です。その南海先生の説明は、国際法を「仕方なく守る」という路線です。
両名はいささか拍子抜けします。やはり急進的な理論に酔っている間は、漸進的な現実路線はつまらなく思えるものです。いつの世も変わらない構図ですね。
ただし本書に出てくる急進論は、結構考えさせられるものでした。各々の自説にしっかりと教養が伴っていることももちろんですが、やはり南海先生の自宅で議論が交わされているという設定も理由の一つかもしれません。現代に蔓延る議論する気の無い炎上狙いの急進論とはわけが違います。流石は現代に残る古典です。
明治時代にここまで正確に、現実的な国際情勢を捉えていたことに驚くばかりです。国際法で読み解く戦後史の真実のサブタイトルである「文明の近代、野蛮な現代」を改めて思い知らされました。
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