今年は自動車業界のショッキングなニュースで幕を開けました。
日本の自動車メーカーはそこまで追い詰められていたのかという衝撃と同時に、自分の無知にも気づかされました。そこでこの記事の筆者である池田直渡氏が何か本を書いていないか調べたところ、この本に行きつきました。
鼎談の書籍化
本書は2年前のYoutube動画を書籍化したものです。産業史が専門の加藤氏を中心に話を進め、自動車業界の専門家である池田氏と岡崎氏が解説を加える構成です。加藤氏がやや煽り気味に切り込み、池田・岡崎の両名が冷静に軌道修正するのが大まかな流れです。
冒頭の製造業に対する思い入れは、やや偏った印象を受けました。当人のポジショントークもあるのかもしれません。ただ3人の鼎談の構成にすることで、全体としてはバランスが取れたのかなと思います。
EVを取り巻くポイント
EVは技術、コスト、重量のいずれの面から考えても、バッテリーが要になります。そのバッテリーはレアメタルが主要原料になるので、そこから資源価格や廃棄物の課題があり、さらには経済安全保障にもつながります。
EVは走行時にはCO2を発生しませんが、当然製造時にはCO2を発生します。製造~走行の全体サイクルでみた場合、およそ10万km以上走行すればEVの方がCO2発生量が少ないそうです。私は1年で1万km走行したことが無いので、相当年数がかかりそうです。
またESG投資もEVを取り巻く環境の一つです。本書を読むと、ESGが長期投資なのか投機なのかわからなくなりました。もしもこれがESGバブルだとすると、いつか崩壊するのでしょうか…。
自国ファーストの世界
EU、アメリカ、中国のいずれも、本音と建前を駆使して自国の利益を追求しています。その建前を真に受ける政治家とメディア…。政治家はレクの時間が限られ、メディアも効率よく炎上させないといけません。どちらも注目を浴びる商売なので、単純な議論になりがちです。
EVが効果を発揮するのに10万kmかかるそうなので、真価が問われるのはまだこれからのようです。ただその時には取り返しのつかない状況になっているのでしょうか。
「政府は余計なことをするな」という本書のメッセージは、リバタリアンや減税派の主張を思わせるものでした。この国の成長のことを考えると、行きつくところは同じなのかもしれません。