先日行った「鳥展」ではゲノム解析による系統分類、例えばタカとハヤブサの分類などを中心に解説していました。本書でもゲノム解析が登場しますが、こちらは絶滅動物の解析。残された標本から得られるゲノム情報を「おしゃべり」と見立てています。
本書の対象は18世紀以降の『人為の絶滅』で、狩猟や人為的な環境変化を原因とした絶滅です。筆者はこれまでにも絶滅動物に関する著書を出していますが、まだ描くべき新しい知見ことがあると本書の冒頭で述べています。その一つがゲノム解析で、進化の過程の研究から絶滅種の復活への挑戦などの最新の研究状況について取材しています。
大半の章が過去の事実関係を整理した内容なのですが、最後の絶滅種の復活に関する章は未来に向けた展望です。古いものを守りたいという保守的な考えと、環境を操作するという進歩的な考えが混ざり合っており、理解するのに苦労する内容でした。筆者は終章で『一筋縄ではいかない思いにとらわれる』と記しており、現時点でその是非は判断しかねるというスタンスです。
2019年の紅白歌合戦で、美空ひばりをVOCALOID:AIで復元させて物議を醸していたことを思い出しました。こちらはすでにVOCALOIDやAIナレーションが普及しているので、あとは個人の好き嫌いが残るのみでしょう。
一方自然界の場合は、欠けたピースを残された野生動物がカバーしているケースもあるので、人間がさらに上から穴埋めすると歪な構造になってしまいます。おしゃべりな絶滅動物たちが、生き物とは何かを問いかけているのかもしれません。
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