文章の素人同然の私は、ライター講座の課題を作成するにあたって実際の雑誌の文章を参考にしました。そこで読んだプレジデント誌の中でひときわ興味を引いたのは、認知科学を専門とする今井むつみ氏のコラム。元になったのは「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策(広告リンク)ですが、人気の本のため図書館での予約件数が200件以上ありました。これは手元に届くまで1年以上かかると思い、その前の著作である本書を読むことに(こちらも多数の予約があり、1ヵ月以上待ちました)。
本書では擬音語/擬態語などのオノマトペを軸に、言語の本質という壮大なテーマに迫ります。
■本書の目次(一部抜粋)■
(広告リンク)言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか (中公新書)
はじめに
第1章 オノマトペとは何か
第2章 アイコン性――形式と意味の類似性
第3章 オノマトペは言語か
第4章 子どもの言語習得1――オノマトペ篇
第5章 言語の進化
第6章 子どもの言語習得2――アブダクション推論篇
第7章 ヒトと動物を分かつもの――推論と思考バイアス
終 章 言語の本質
あとがき/参考文献
1~3章までは言語の概念についての説明が続いて苦戦したのですが、4章からは少しずつ読みやすくなりました。子どもが登場するので自分事に思えて、難しい内容でも何とか理解しようと頭が働いたのかもしれません。本書で言うところの「身体的な経験」ですね。
子どもの言語習得とオノマトペは深い関係にあります。絵本にオノマトペが多数登場することがいい例ですね。その中でも印象的だったのは、オノマトペの役割を『言語の大局観を与える』と表現していたことです。膨大な数の単語を身につける前に直感的で理解しやすいオノマトペを経ることで、段階的に言語能力を築き上げることができます。
後半では言い間違いなどを例にした、言語習得中に起きる思考のメカニズムへと話が移ります。初めて聞いたのが『アブダクション推論』で、ネットで調べると「もっともらしい推論」と出てきます。演繹法や帰納法よりも信頼性が低い位置づけの思考です。オノマトペで言語習得への足掛かりをつかんでからは、覚えた単語を元に推論で世界を広げていきます。これがヒトと動物との違いです。間違えながら生きるのがヒト、ともいえるかもしれません。
本書は育児書ではないので、子どもの学習のためのノウハウが書いてあるわけではありません。研究者の立場から子どもや動物を観察対象としてとらえ、データを元に理論を展開していきます。そんな一歩引いた視点で子どもの成長を見守ることも、たまには必要ですね。
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