ファシリテーターの本を探していたら、2004年出版のこの本が定番として出てきました。基本的な考え方はいつの時代も変わらないのではと思って読みましたが、結構時代が移り変わっていることに気づかされました。
ストーリー仕立てのビジネス書
本書では架空の会社を舞台に、ファシリテーターやファシリタティブ・リーダーが活躍します。ストーリー形式のビジネス本としては、今年読んだ13歳からの経営の教科書を思い出しました。するとどうしても気になってしまうのが、外部コンサルに頼るビジョンの無い経営陣の存在です。本書は助っ人ファシリテーターが主役なので、致し方無いことだとは思いますが。
時代背景やポジショントークに注意
ストーリーの中に、ファシリテーションの基礎がちりばめられています。
・組織は段階を経て成長する:タックマンモデル
・他人を受け入れる際には懸念が生じる:ギブの懸念
・自分と他人の認識にはズレがある:ジョハリの窓
などなど。
これらがファシリテーションに重要なことは理解出来ました。
しかし、そのための手段が
・合宿
・飲み会
・アイスブレイク
になってしまうのは、当時の時代を象徴しているように思いました。
よく考えればリモートで効率よく業務出来るのは、大半の企業にとってはつい最近のことでしかありません。一昔前であれば常識的なコミュニケーションの取り方も、現在の技術環境では非常に非効率的に見えてしまいます。
また本書でもてはやされているアイスブレイクは、普通は不信感が芽生えてしまうと思います。予測できないストーリーを楽しみに映画を観たり小説を読んだりするのとは違って、これから信頼関係を築いていくわけですから、騙し討ちは逆効果です。コンサルがいかにクライアントを見下しているかを象徴するような話ですね。
本書はあくまでコンサル側のポジショントークであることを理解する必要があるでしょう。基本的にはコンサルティングの宣伝です。その上で、参考にできそうなものは参考にする、というスタンスで読み進めるのが良いと思いました。