生き物の死にざま はかない命の物語 / 稲垣栄洋

読書感想文
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久々にペンギン本を読もうと思ったら、本書にたどり着きました。サブタイトルが無い方が先に出版された方で、本書は続編の位置づけです。

各章で一つの生き物にスポットをあて、解説のあとに物語が続きます。27通りの命の物語、悲しい気持ちになることもありましたが、それだけではない悟りのような気持ちが芽生えました。

文庫本の中では文字が大きいので、すぐ読み終わりそうな気がしたのですが、そんなことはありません。ペンギンだけは元々知識があったので、最初のコウテイペンギンの章はすぐ読めました。しかし次の章からは、読み終えるたびに物語の余韻に浸ってすぐに次の章には進めませんでした。

タイトルの通り死をテーマにしているので、気分は重たくなります。われわれ人間が影響を及ぼす場面では、生き物と言えども他人事には思えませんでした。しかし物語自体は人間の責任を追及する前に切り上げて、こちらに考る余地を与えてくれます。この構成も相まって、各章ごとにじっくり考える時間が必要になりました。

そこまで重たい気持ちにならず、むしろ示唆に富んでいたのが、後半の雑草や樹木の章です。長寿命の樹木の類は進化の果てに、短い命の草に生まれ変わりました。この現象が単純に一般社会に応用できるわけでは無いですが、政治や経済の行く末が気になりました。

最後に「今」の大切さを訴えて本書は締め括っています。生き物たちは「今」を生きているのに、人間は未来や過去にとらわれていると。とはいえ、文化がヒトを進化させたにもあるように、人間は「今」の知識だけでは生きられない生き物でもあります。文化を受け継がないと、基本的な生命活動でさえままならない生き物になってしまいました。そんな人間はどれくらい「今」を生きるべきなのか、秋の夜長は気づいたら思いにふけてしまいます。

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