二〇三高地 / 長南政義

読書感想文
読書感想文

乃木希典を初めて知ったのは司馬遼太郎の『坂の上の雲』です。そこでは徹底的に愚将扱いされていたので、第一印象はあまりよくありませんでした。

次に登場したのは夏目漱石の『こころ』。明治天皇の崩御が一つの時代の終わりを象徴するのに対して、後を追う乃木は筆者の心情を写す鏡と言ってもいいかもしれません。乃木がその当時どのような存在であったかを垣間見ることができます。

本だけではわからないので、実際に乃木神社にも足を運んだことがあります。日露戦争の軍人を祀った神社としては東郷神社にも行ったことがあるのですが、東郷が凛々しく鎮座しているのに対して、乃木は口を閉ざしてひっそりと佇んでいるような印象でした。

そして最新の乃木の評価が解説されているのが本書です。いまだに新しい史料が発見され、研究が重ねられているのは驚きです。エンタメや逆張りとしての毀誉褒貶ではない、大量の文献を基にした詳細な分析に出会えて、乃木に対する長年のモヤモヤが晴れました。

顛末自体はわかっているのですが、それでも読み進めるにつれて敗戦を重ねる戦況に気を揉んでしまいます。当の本人たちの心中はいかほどか。日本の命運をかけた決断に学ぶというのは畏れ多いですね。

参考動画

本のポイントは筆者が動画で丁寧に解説してくれたので、感想文には個人的なことばかり書いてしまいました。

広告
タイトルとURLをコピーしました