保守系雑誌で陰謀論を喝破するというシュールな特集が組まれていたので、普段は近寄らない雑誌に思わず手を出してしまいました。
特集「情報」への警鐘
本誌の中ほどで組まれていた企画です。表紙にも載っていないのですが、これを目当てに購入しました。
「陰謀論」防ぐ懐疑のススメ/物江潤
保守思想によって陰謀論に対抗することができるという要旨です。慣習的、伝統的な価値基準は安定しているので、容易には陰謀論に染まらないらしいです。
本誌のイメージ通りのレベル。次のページでひっくり返されるとも知らずに…。
陰謀論は社会秩序を蝕む/内藤陽介
今号のお目当て。保守を礼賛する流れをぶった切ります。
保守と陰謀論との親和性が丁寧に説明してあります。反グローバリズム、反ポリコレが抱える不安や不満に寄り添う形でディープステート陰謀論が蔓延りました。そしてそれは笑いごとで済まず、実害が生じるまでに及んでいます。
これを寄稿した経緯は知る由もないですが、保守雑誌で保守言論人を糾弾するのは新鮮で痛快でした。
反ワクチン集団が過激化した理由/加藤文宏
コロナワクチンの接種会場で妨害行為を働いた神真都Qの参加者への取材レポートです。
こちらは保守が陰謀論にハマったケースとは違い、特に政治や社会に関心が無かった人々が、コロナ禍をきっかけに陰謀論にハマったパターンです。コロナ禍で情報があふれかえる中、情報リテラシーに乏しい人々は社会から置いていかれ、陰謀論だけが居場所になってしまいました。
もちろん過激化するのは特殊なケースですが、一人一人を追っていくとそこまで特殊な生い立ちに思えませんでした。すなわちまだ同様のケースがあるのではないかと、これからの行く末を不安にさせて、この記事を終えています。
特ダネ至上主義で自爆する文春砲/新田哲史
官報複合体 / 牧野洋では、文春には権力に与しないジャーナリズムがあると称賛していました。その象徴が、黒川検事長の賭け麻雀です。すなわち権力側と卓を囲む産経新聞と朝日新聞に対して、あくまで権力側を監視するのが文春であると。
一方この記事では、文春は警察と悪魔合体しているそうです。まあ所詮文春だし。それにしてもこの筆者、悪魔合体というワード好きですね。
南京事件で荒唐無稽のファクトチェック/池田悠
南京事件のファクトチェックは大事ではありますが、実質はファクト云々よりも政治の駆け引きになっているので、ここに並べる記事かどうかは疑問です。
ジャニーズ報道は「反省したふり」/原英史
ジャニーズの事件については論点が色々あるのですが、本記事ではメディアの報道しない自由について解説しています。
もともと2000年頃に文春が報じた時には各メディアはダンマリして、今になって躍起になって報道しています。その報道しない理由をいくつかに分類しています。すなわち、扱う必要性がない/信頼性が無い/ジャニーズへの忖度、などに分けて、メディアのあるべき姿を提唱しています。
この問題、既得権の仕組みが根本にあるので、メディアの在り方を考えても、というかメディアに期待してもしょうがないかなと思います。
初めて保守系雑誌に手を出しましたが、まあまあ楽しめました。また面白い企画があれば。
本記事について、WiLLに名指しで批判記事が載ったようです。
正論、WiLL、Hanadaは全部同じような雑誌と思っていましたが、それぞれスタンスが違うのですね。初めて知りました。