以前読んだ戦略で読み解く日本合戦史がかなり難しかったのですが、懲りずにまたこの著者の本に挑戦してみました。
地政学×合戦史
本書も例にもれず私には難解な本でした。もともとこの著者の本は、多数の登場人物や地名を理解している方向けの本だと思うので、教養が無いと結構厳しいです…。
さらに本書のタイトルは「地政学で読み解く」です。すなわち地理的要素や政治的要素を軸にしているので、鎌倉、室町などの歴史的な軸はバラバラになって各章に配置されています。
例えば足利尊氏のように日本横断しているような人物は、その人物の歴史を関東、関西、九州という地理的な軸でバラバラにしているので、本書のいたるところで出てきます。
その地理的な軸についても、視点によってさらに分類されます。例えば関東であれば、関東内での争い、関東ー近畿、関東ー奥州の見方があり、それぞれで重要な地点や政治的な思惑があります。そういった戦略的な切り口になじみがなければ、今何を読んでいるのかわからなくなります(なりました…)。
中途半端な勢力
本書は各時代の覇者を並べていくわけではなく、あくまで主役は地点や地形なので、各時代の地方勢力にもスポットが当たります。個人的にはそういう勢力に哀愁や悲哀を感じてしまいました。
九州は本州とは海で隔てられていることもあり、統一さえすれば自立勢力として君臨することができたようです。実際に古代では大陸との接点もあることから、九州は日本を代表するエリアでした。ただし地形的に勢力が分散しやすいため、九州統一が成ることはありませんでした。
奥州も中央に匹敵する戦力があったようです。8~9世紀にかけて38年戦争というヨーロッパ並みの長期の戦乱も起きていました。ただしその後は中途半端な勢力になりがちで、源頼朝の時代には敵認定されて奥州藤原氏は滅ぼされてしまいます。
中央と少し距離をとった中途半端な勢力というのは、現代の一般社会にもありがちな存在で、たどる運命も似たようなものだなあと思いました。
地政学の活用
当然ですが本書に挙げられている日本国内の重要な地点については、現在では重要でなくなっていると本書の最後に書かれています。時代が違いますからね。
ただし本質的な意味で、歴史は繰り返す、という観点から何かしらかの活用ができないかと思いました。その前に、歴史的な地名の勉強ですかね、上野国、分倍河原、国府台…。