近所のスーパーでアウトレット本が定期的に売られており、大半は子供向けの絵本や料理本などのファミリー向けの本が並んでいます。その片隅に硬派な本がありました。「思考の整理学」で有名な外山滋比古先生の本です。このブログで日本語の練習をしていることもあり、思わず購入してしまいました。
各章感想
本書は書道専門誌「墨」に連載されたエッセイが、1980年に単行本の「ことばの姿」にまとめられ、さらに2013年に文庫版として発行されたものです。40年以上前の文章ですが、現在でもとても興味深い内容でした。
せっかくなので各章ごとに感想を残しておきます。
立てるか寝かすか
漢数字は横線で一、二、三を表すのに対し、ギリシャ数字ではⅠ、Ⅱ、Ⅲで表します。ここから、西洋の文字は横書き、漢字は縦書きの方が読むのに適しているとのことです。
自分の周りを眺めてみたら、一般的な書籍やマンガは縦書き、実用書は横書きでした。仕事で使う書類や役所の申請書は全部横書きですね。このブログ、というかWebサイトも横書き。
本書で言われているような、横書きでの目の疲れを意識したことはありませんでした。私は本書でいうところの、無神経で鈍感な日本人のようです。
スタイルの理想
スタイルというと姿かたちをイメージしますが、ここでは文章の様式のことです。曰く、日本人には独創的なスタイルが欠けていると。
さらには話をするスタイルに加えて、話を聞くスタイルにも言及します。すなわち、何を話すべきか、何を聞くべきか。
強引にまとめると、自分のスタイルを持て、ということでしょうか。
名文
名文を題材に、日本語の文章の内容や形式を深堀します。
キーワードの一つが「レトリック」。理科系の作文技術にも登場しました。これが弁論術に端を発しているというのは初めて知りました。相手をどう説得するかという作文の方法は、習った覚えがない割に非常に重要な技術ですね。
金言名句
名文の次は名句です。文章よりも短い単位ですね。色紙に書くサイズ。
「アフォリズム」という用語を初めて知りました。簡潔な表現という意味では格言とも似ていますが、「アフォリズム」の説明には「鋭利に」「鋭く」という意味が加わります。出典がわかるのがアフォリズム、口伝が諺だと理解しました。
いずれも逆の意味を持つものが少なくありません。そこの使い分けができるのが一人前とのこと。なかなか難しいと思いますが…。
漢字そして仮名
日本語の大きな特徴である漢字と仮名。これに連動したためか、話し言葉と書き言葉が日本語では違います。言われてみれば確かに、プレゼン資料と台本とでは大分表現が変わります。
個人的にはこの複雑な言語のおかげで迷惑メールを判別できることもあるので、セキュリティの面でも興味深いと思いました。
直線と曲線
書道を推奨する章。書道雑誌ですからね。
本書で言われているように、確かに筆圧の面では最も手にやさしい筆記具です。自分は墨で服が汚れるので大嫌いでしたが…。
刷る文化
原本とコピーから、話題はサインと判子にまで及びます。習い事の書道はお手本をコピーしますね。
電子サインなどが普及し始めた現在では少々時代を感じる章ですが、本質的なポイントは現在に通じるものがあります。コピーや模倣は、どこまでが価値のあるものか。
声のかたち
章のタイトルからして難しい内容でした。声のかたち?
英語の発音を習うときに、よくアクセントやリズムを意識するようにと言われます。すなわち日本人が苦手なところなのでしょう。日本語では五七五のようなリズムもありますが、母音の長短や強弱があるわけではないので、英語のリズムとは似て非なるもののようです。
終わりよければ……
文章の語尾に関する話題です。ブログに限らず業務上の報告書でも悩ましいところです。
何も考えずに文章を書くと「…した」というのが続きがちになります。その点英語は名詞で終わることができるので、末尾のバリエーションが豊富です。
「です・ます」、「である」の違いにも言及してあります。本書曰く、前者が話し言葉、後者が書き言葉だそうです。なお本ブログの文章レベルでは「である」はおこがましい気がしたので、基本的に「です・ます」にしています。
まとめ
日本語の普段意識していなかった点を深堀することができました。パソコンで文章を打つ時だけでなく、口頭で述べる際や手書き場合でも、意識することは多いのではないでしょうか。
今後の読書の際にも参考になりそうです。日本語を意識することで、筆者の考え方も紐解けるかもしれません。今後の読書が有意義な時間になるように訓練します。