アメリカ大統領選挙の直前に出版された本なので、選挙の予習として読むことを意図されたのかもしれません。しかし結果が出た後の方が焦点を絞って読める気がしたのでので、選挙後に落ち着いて読むことにしました。
本書はアメリカで起こっている分断について選挙戦、宗教、人種、シンクタンク、労働組合の観点から各専門家の見解をインタビュー形式でまとめています。なおインタビューの聞き手や、「はじめに」「おわりに」、および各章末のコラムの著者は「編集部」としか書いていません。そのわりには、かなり個人的な見解が見られるのですが、宝島社の見解ということでよいのでしょうか?
各章ごとにテーマは異なるのですが、分断の原因として共通して登場したのが無党派層の選挙参加です。政治への関心が広がる事は、市民の意見を届けるためにはいいことのように思っていました。しかし、そもそも無関心な層の興味を引くわけですから、それには刺激的な手法が用いられるため、結果として分断につながるということです。政治ネタの取り扱いは難しいですね。
個人的には言論人が「ポピュリズム」という言葉を用いる時は、なんだか上から目線に聞こえて少々不快な思いをしていました。しかし本書では客観的に「ポピュリズム」を用いていたためか、冷静に読み進めることができました。その違いをうまく説明できれば良いのですが。
アメリカ政治に関しては、これまでも数冊で勉強してきましたのでその復習にもなりました。ホームスクーリングはLeave US Aloneでも登場したテーマです。本書の方ではより宗教的な側面に着目して解説されていました。また選挙技術の発達が引き起こす分断については、なぜ、成熟した民主主義は分断を引き起こすのかでも取り上げられていました。こちらは2019年出版の本ですので、分断がすでに定着して久しくなっていることを思い知らされます。
本書によると日本はまだマシな方らしいですが、今後の動きはわかりません。世の中が白黒はっきりつくほど単純でないということを忘れないためにも、日々社会勉強を積み重ねていく必要があると改めて感じました。
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