少し他人事のように思っていましたが、会議の実務の本を読んでから、身近で汎用的な現象であることに気づきました。ということでその本も引用しながら、今回の本の感想をまとめていきます。
出版後の出来事
本書は民主主義の基本となる選挙を取り上げています。その選挙について、アメリカで大きな事件が起きました。
2019年12月 本書出版
2020年11月 アメリカ大統領選挙
2021年1月 アメリカ議会議事堂襲撃事件
出版当時に本を読んだだけでは、分断の構図について理解はできても実感できていませんでした。しかし、襲撃事件をきっかけに、分断がこれほど進んでいることを思い知らされました。話が通じなくなる前に、世の中の分断の構図を理解しておかないといけません。
民主主義の仕組み
民主主義は独裁とか専制の対義語にあたり、多数決で決めるシステムです。この多数決は、一般社会ではあまり望ましくないシステムでもあります。以下、前述の会議の本を引用します。少なくとも、封建制よりはマシだよ、ぐらいに思っておくのが良いのかもしれません。
現代社会では、「ウィン・ルーズ(勝ち・負け)」を生み出すアプローチがあらゆるところで見られる。もちろん、多数決は民主主義の根幹をなすものではあるが、投票の効果を疑問視する傾向が強くなってきている。
会議が絶対うまくいく法 / 5. 全会一致の結論を探すコツ
社会システムを改革する力はありませんが、身近な組織では分断が避けられるような振る舞いをしたいものです。ちょっと話が逸れますが同じ本から引用します。
役員会などの水平的な組織の場合、もしコンセンサスが得られなければ、多数決で決定されることをみんな知っている。だからと言って、少数派を服従させようと思わないこと。ファシリテーターは、多数決に訴えれば、グループの団結力が弱まり、決定された結論を支持する基盤が弱まる可能性を指摘すべきだ。また、極端な立場に固執する一部の人には、柔軟に考えないと、今出る案やその修正案よりも失うものが多い結論になる可能性を指摘しておく必要がある。
会議が絶対うまくいく法 / 14. 問題解決のコツ
さて民主主義の基本である選挙は、まさしくシビアな勝ち・負けの世界です。この選挙に何とか勝つために、新しい分断構造が生み出されていきます。選挙に勝つことが至上命題であるならば、このような流れは自然なことだと思いました。われわれ市民の代表が代議士だと思っていましたが、そんな甘い世界ではないようです。
本書曰く、わざわざ無党派層を獲得するよりも、既存の支持者を先鋭化させた方が「コスパ」が良いそうです。確かに戦略としては理にかなっていると思いました。無党派層の自分としては、なんだか政治家から相手にされていないようで、複雑な思いですが。
情報を理解して、判断する
メディアや知識人も、分断構造を飯のタネに使っています。本書では右側・左側それぞれの分断の方法を説明してくれます。分断のメカニズムを理解することで、テレビやネットの騒ぎも迷惑メールと同レベルに扱うことができればと思います。世の中はそんなに単純ではないと。
そのためには、情報の妥当性を自分で判断できないといけません。本書では読書を推奨していたので、今後も本ブログを継続するモチベーションが上がりました。またビジネススキルとして身につける、ロジカル&クリティカルシンキングも役に立つと思います。そういう意味では、真っ当に社会人をやっていれば大丈夫な気もするのですが。